今日、2022年2月4日に北京オリンピックが開幕となります。
コロナ禍で大変な制約がある中、選手達が積み上げてきた努力の集大成を発揮する場で、最高のパフォーマンスが見れることをとても楽しみにしています。
開幕に先立ち予選が行われた、フリースタイルスキーのモーグルでは、男女共にメダルの獲得が期待され、注目を集めています。
このモーグルという競技は、バンクーバー・ソチ・平昌オリンピックに3大会連続出場した村田愛里咲さんと長らく関わっていたこともあり、個人的にも注目しています。
実際のサポートにおいても、いわゆる筋力トレーニングだけではなく、「ゆるむ」ことの重要性をお伝えしてきましたが、「ゆるむ」とは、単に脱力を意味している訳ではありません。
「ゆるむ」とは、相対的なもので完璧な状態はあってないようなものです。
簡単に説明すると、収縮と弛緩の幅を広げることを意味しており、局面に応じた最適な身体の使い方を選択する能力である「格定力」の向上に繋がります。
この「格定力」の重要性は、競技中には常に最大筋力を発揮する局面が、ほとんど存在しないということを考えると理解しやすいかと思います。
「ゆるむ」ことは、全ての競技の前提条件として必要不可欠なものですが、今回は僕のサポートしたスキー(モーグル)を例に説明させていただきます。
スキーは斜面を滑り降りる競技であるということからもお分かりかと思いますが、重心の落下により移動します。
つまり、地上を速く走れる選手がスキーで速く滑れるかというと、基本的には関係ありません。
では、どのように身体を使えばスキーで速く滑ることができるのでしょうか?
答えはいたってシンプルで、滑走時のブレーキ成分をいかに排除できるかに尽きます。
この滑走時の代表的なブレーキ成分は、大腿四頭筋です。
スキーを行ったことがある方でしたら、スキーの後に大腿四頭筋(太腿前面)の筋肉痛を経験したことがある場合も少なくないのではないでしょうか?
実際、日本トップレベルの村田愛里咲さんですら、シーズン開始時には、必ずと言ってよいほど大腿四頭筋の筋肉痛が出現していたそうです。
大腿四頭筋によるブレーキ成分は、斜面を滑走するスキーの運動構造を考えた場合、一般的には腰椎の伸展運動に伴い大きくなります。
また、スキーは固定性の強固なブーツを履くため、過度な足関節の可動性を必要としない反面、特に脊柱・仙腸関節・股関節・膝関節などの可動性が、「ゆるむ」ための前提条件として重要になります。
つまり、必要以上の大腿四頭筋によるブレーキ成分を排除するためには、最低限これらの前提条件を整えた上で、「ゆるむ」ことが必要不可欠になるのです。
話の内容をモーグルに移しますが、モーグルは斜面を滑走することに加えて、エアと呼ばれるアクロバティックなジャンプの要素が含まれますが、その採点は、「ターン60%、エア20%、スピード20%」の合計点により競われます。
中でも配分の最も大きいターンは、
・上体は常にフォールライン進行方向に向かっていること
・滑走中の上半身は、上下左右に揺れることなく安定した状態であること
が採点基準となります。
滑走時に固いコブに対して、選手自身が身体を固めていた場合、大きな反発力が出現し、上半身の動揺に繋がりやすいことは容易に想像がつくかと思います。
モーグルは滑走中に固いコブの衝撃をしなやかに分散した上で、より速く滑り降りなければならないという競技特性から考えると、他のスキー競技の中でも「ゆるむ」ことがより重要な競技かもしれません。
「ゆるむ」ためのポイントは、その競技や個人の特性によっても異なり、本質はかなり複雑になりますが、最初の導入として「過度に力まない」という点に意識を持つことから始めてください。
「生涯サッカー」のためにも、この「ゆるむ」ということは重要な要素になりますので、詳しく知りたい場合は専門のスポーツトレーナーなどに相談してみてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました!