今回は、整形外科のリハビリテーションで重要な「関節の固さの改善」に関してお伝えします。
関節の固さの原因は、大きく2つに分類することができます。
1つ目は、当然ながら筋肉や関節などの「物理的な固さ」になります。
この物理的な固さの改善には、ストレッチで筋肉を伸ばしたり、関節の隙間を広げるようなアプローチが一般的に行われているかと思います。
しかし、 物理的な固さの改善を目的にした長期間のリハビリテーションやセルフエクササイズを行っていても、症状の改善が認められないケースも少なからず見受けられます。
これには多くの理由が考えられますが、代表的なものとして、
①炎症期で痛みが強い
②関節の変形が重度
③筋肉の緊張が高い
などが挙げられます。
①の炎症は、体の中の現象のため、よほど腫れが強い場合を除いて、直接目では確認しずらいかもしれませんが、わかりやすく言い換えると「出血している傷」があるようなものです。
つまり、出血した傷がすぐに治らないのと同じで、炎症の改善には症状により個人差はありますが、ある一定期間が必要となります。
②の関節の変形が重度なことによる固さは、関節機能の破綻と強い痛みを伴うことも少なくないため、根本的な固さの改善は、リハビリテーションのみでは困難な場合もありますので、症状が悪化するなどした際には専門医の診察をお勧めします。
③の筋肉の緊張が高いというのは、僕のブログで何度もお話しさせてもらっていますが、関節の固さのみならず痛みの出現にも影響します。
ですから、筋肉の緊張をコントロールしなければ、関節の固さの改善は難しいということになります。
この③の筋肉の緊張に非常に深く関わってきますが、関節の固さに影響する2つ目の原因は、「心因的な緊張による固さ」になります。
筋肉の緊張が高いというのは、痛みや疲労などにより物理的に筋肉が張っている場合だけではなく、心因的な要素が影響しています。

ちょっと極端な例ですが、痛みや疲労などがなくても、落ちたら命を落とすような高さ数百メートルもある崖の先端に立たされたら、普通の人は筋肉が硬直するはずです。
なぜ筋肉が硬直するのかというと、 当然「恐怖」によって心因的な緊張が高くなったからですよね。
これをリハビリテーションの場面に置き換えると、ここまでの恐怖はないにせよ、よくある事例として「筋肉の緊張を抜こう」と考えすぎた結果、心因的な緊張が高くなり、余計に筋肉の緊張が高くなるという悪循環に陥ってしまう患者さんも多くいらっしゃいます。
ですから、「筋肉の緊張を抜こう」と考えるのではなく、「何もしない」と考えられるようになることが非常に大切です。
関節を動かされている時に「筋肉の緊張を抜こう」と考えている時点で、動かされる方向を予測してしまい、結果として過剰な筋肉の緊張につながります。

一方、「何もしない」という意識は、前述した動きの予測がないことから、過剰な筋肉の緊張にはつながりません。
ここまでの内容をまとめると、物理的な固さを改善するよりも、まずは心因的な緊張による固さを改善することが優先順位としては高くなります。
心因的な緊張による固さがある状態では、リハビリテーションを行って関節の動きが改善したとしても、それは一時的なもので、またすぐに元の状態に戻ってしまいます。
この状態は、冷凍庫から氷を取り出して、せっかく溶けて水になったものを、また冷凍庫に入れて凍らせてしまうようなものです。
「何もしない」という意識を持つことは、痛みや長年の誤った体の使い方を脳が記憶しているため、すぐには出来ない場合も多いですが、その本質は決して難しいことではありません。
「生涯サッカー」のためにも、意識の持ち方を見直して、力んでケガにつながるような体の状態を改善していきましょうね。
最後までお読みいただきありがとうございました!