スポーツ経験者なら、「肉離れ」というケガの名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
肉離れとは、医学的には「筋挫傷」と呼ばれます。
その病態は、筋肉の一部が部分断裂(まれに完全断裂)し、炎症や内出血などによって、患部の腫れと共に激しい痛みを伴います。
受傷機転の多くは、スポーツ中など瞬発的に筋肉に強い負荷がかかり、その負荷に筋肉が耐えられなくなった時に、筋肉の断裂が生じます。
好発部位は、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)、ハムストリング(太もも裏側の筋肉)、腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)が代表的です。
しかし、筋肉に疲労が蓄積している場合などには、軽い運動や日常生活動作レベルの負荷でも、肉離れになることがあります。
この肉離れを引き起こす「大きな原因」として、
・筋肉の柔軟性低下(可動域制限や筋肉の硬さ)
・拮抗筋(動かす筋肉と反対の作用を持つ筋肉)のバランス不良
などが挙げられます。
スポーツの前にウォーミングアップを行う目的は、良いパフォーマンスにつなげるための準備という意味合いも当然ありますが、筋肉を柔らかい状態にしておくことで、肉離れなどのケガを防ぐ効果も期待できます。
肉離れは、重症度の違いにより、以下の3パターンに分類されます。
1度(軽症):腱・筋膜に損傷がなく、筋肉内に出血を認める(出血型)
「保存療法が選択され、競技復帰には約1〜2週間」
2度(中等症):筋腱移行部の損傷を認めるが、完全断裂・付着部の裂離を認めない(筋腱移行部損傷型)
「保存療法が選択され、競技復帰には約4〜6週間」
3度(重症):筋腱の短縮を伴う腱の完全断裂または付着部裂離(筋腱付着部損傷型)
「手術療法が選択され、競技復帰は術後の経過次第」
また、上記の図にあるように、現場レベルで行える肉離れの評価方法として、筋肉をストレッチした時の痛みや関節の動く範囲などから、重症度を簡易的に判断することができます。
肉離れ受傷直後の応急処置は、重症度によらず、
・楽な姿勢を取り、すぐに患部をアイシングするが、冷やしすぎによる血行の低下には注意
・患部を圧迫しながら、心臓より高く持ち上げることで、腫れを軽減
・移動時は、ケガをした足に体重をかけない
などの対応が原則です。
初期のリハビリテーションでは、安静と固定が基本ですが、血行を良くすることを目的とした運動療法や適切な動作方法の獲得によって、損傷部位の早期回復を促していきます。
その上で、固くなった筋肉の柔軟性回復や筋力のアンバランスを改善し、競技復帰後の再発予防にも努めます。
なお、前述した肉離れの重症度分類に、競技復帰までの期間について目安を記載しましたが、最優先すべきは「痛みがなく、パフォーマンスが戻っている」かです。
最低限、患部の伸張時痛(ストレッチ時)や収縮時痛(筋力発揮時)が取れて、ケガをしていない側と同じような感覚になれば、スポーツの再開が可能となるかもしれません。
くれぐれも違和感が残った状態で、ジャンプやダッシュなどの「瞬発力を伴うような動作」を行うことは、痛みを悪化させる可能性があるので避けてください。
筋肉の合成に必要なタンパク質を摂取するために、お肉を食べない「肉離れ(肉断ち)」は必要ありませんが、ケガの「肉離れ」とはサヨナラしましょうね(笑)
最後までお読みいただきありがとうございました!